自転車遊び=BikinG

万博とマウンテンバイクと環境破壊

(2004/01/13)


 2005年に愛知県で万博が開催されます。“愛・地球博”“テーマ:自然の叡智”環境に配慮した21世紀型の万博・・・。スローガンは立派であるが、やってることは従来どうりの大規模土木事業・・・関連工事の始まった会場周辺に出かけて思った第一印象です。

 もともとこのエリアは、“海上の森”と呼ばれ、緑豊かな里山でした。大都市近郊としては、奇跡的に開発を逃れた丘陵地帯でした。ただし、全く手付かずの自然というわけではなく、自然の池かと思えば砂防ダムだったり、高圧線が走っていたり。森も地元の方の生活と密着した、何代かに及んで人の手で作られてきた里山と思われます。だからこそ、人が歩けるほどの道、つまり我々マウンテンバイク乗りにはうれしいシングルトラック(自動車では入れない狭い林道)の宝庫であったりします。それまでも、何度か遊ばせてもらってきました。もちろんハイキングの方にも魅力的なエリアでしょうが、知る人ぞ知るといった段階のうちは、人出、自転車出も極少なく、問題は無かったのですが。
 ところが、何年か前、万博の誘致活動の頃から一変しました。また、環境アセスメントが進むにつれて、貴重な動植物の存在が話題に上がると、これに拍車がかかりました。オオタカが絶滅するかも、なんてテレビのニュースで連日取り上げられたりしたものだから、にわかエコロジストが押しかけたのか。はたまた折からのウォーキングブーム、ハイキングブームの影響か。とにかく、人出が倍増、倍々増、いや数十倍増といった感じです。まともな駐車場もなかったころ、観光バスで乗り付けて、普段着の人がぞろぞろ降りてくるのを見た時はびっくりしました。当然、人をかき分け走るわけにもいかず、この何年かは避けてきたエリアです。ただ、周辺の広い範囲で楽しいフィールドもありますので、冬の一時、一番人出の少ない時期を選んで、ここの駐車場を利用させていただいて、海上の森を横目で見ながら通過していたのですが。さすがに野次馬的人出は随分少なくなってきているようです。

  
 先日、約一年ぶりにこの地を訪れ、本格化した万博関連の工事現場を目の当たりにしました。正確にはアクセス道路のインターチェンジの造成現場のようです。ぽっかり開いた巨大な空間にコンクリートの橋脚が建ちつつあります。ついには始まったかと愕然としたのと同時に、ちょっとびっくりしたことがあります。伐採前の林を横断していたシングルトラックが維持されていたのです。もちろん若干ルートは変更されているのでしょうが、工事現場の隙間を縫うように「散策路」と表示された通路が続きます。ルートには民家も事業所も景勝地も何も無いところなので、完全廃道または工事期間中の完全通行止めといった安易な選択もあったでしょう。工事現場の社会見学コースとの捉え方も出来ますが、すぐ近くに舗装路もあり移動手段としては価値の無いルートです。にもかかわらず残されたということは、当然工事終了後も運用される「散策路」なのでしょう。どこまで再現できるか、お役所のお手並み拝見といったところですが、“環境に配慮した”というポーズだけでなければよいのですが。とにかく我々はルートを失うことなく、先に進むことが出来ました。

 かと思えば、同じ日の別のルートでの出来事です。ここは民家も程近い、舗装路から脇に入るシングルトラックの入り口でのことです。犬と散歩中の地元の方らしき人とすれ違いまして、声をかけて挨拶したところ、「ここは歩道だから自転車は入らないで。」とズバリ言われてしまいました。詳しく話をし無いうちに下に降りて行ってしまわれたので、真意はわかりませんが、とりあえず地元の方の意にそぐわない事はやめておきましょう。ここは引き返して、別のルートを行きます。ただ、このルートは案内看板も注意書きも全く無いルートで、もちろん車両通行禁止やマウンテンバイク乗り入れ禁止の警告も見当たらないことを加えておきます。管理者の表示もありませんので、相談も、苦情も、どこにもぶつける訳にはいきませんが、私道の可能性もあり、無茶をしてはいけません。“八曽の乗り入れ禁止”のこともあり、こういった件に関してとてもナーバスになっている最近です。

 さらに同じ日の、また別のルートでの出来事です。ここは4駆やオフ車、トライアルの方にもおなじみの林道です。相変わらず、大きく路面が崩れて、愛好家には楽しいコースとなっています。行った事がない方には想像が難しいかと思われますが、車両の轍がどんどん深くなって、雨の浸食も加わって、スキーのモーグルコースが激しくなったような状況です。この状況が完全に保全されるのであれば、理想的なのですが、崩壊が進行している途中でしかありません。すでに実用的な通過道路としての役目は成していませんが、将来において修繕されるなり、万一舗装化されるなどしたら、愛好家の落胆する気持ちは理解できます。ただ、このままでは完全崩壊も時間の問題です。

 さて、環境破壊とは一体何なんでしょう。環境を守るとはどうすればいいのでしょう。一旦絶滅した動植物を元に戻すことは出来ませんし、樹齢千年の森を蘇らせることも現実的な話ではありません。ここは絶対譲れないところでしょう。ただ、せめて人間が2世代か3世代で作ることの出来る森なら可能性はあります。すでに人間の手が加えられた自然は、管理し続けなければ維持できないとも言われています。利用価値が薄れて人の手を離れた森は、かえって荒廃が進むとも聞きます。森の崩壊が、平地(都市)や海や空(空気)の環境破壊につながることも想像できます。そうは言っても人類の経済活動や文明生活とのバランスもあります。土木工事で旧知の森が失われたことを嘆く一方で、高速道路の開通でスキー場までの移動が便利になることを喜んでいる。身勝手な意見はさまざまかと思いますので、何とかうまく調整して、自然を守っていければよいのですが。
 そして一言付け加えたい。どうせ、森の再開発をするのなら、遊歩道を整備するのと同時に、遊“自転車”道も忘れないでいただきたい。これは一般道でも言えることだが、自転車を利用しやすい環境がなければ、自動車の利用を控えて自転車を活用しましょうなど言っても始まりません。森の中の“遊自転車道”で自転車の楽しさを理解してもらえれば、普段の通勤にも自転車で行ってみようかと言う考えにもつながります。ただ、勘違いしてもらうと困るのですが、“自転車道の整備=アスファルト舗装”では楽しいコースとなりません。あくまで自然と親しむことがテーマです。かといって、上級者やマニアだけの為のコースになっても困ります。楽しいと思えるコースでなければ、リピーターは期待できず、いずれ開店休業。どこかの箱物行政のようになってしまいます。では楽しいコースとは、・・・。行政にしろ、民間にしろ、もし機会がありましたら、ぜひ私に意見させてください。

 さまざまな立場で、さまざまな考えがあると思います。このコラムへのご意見ご感想がございましたら、ぜひお聞かせ下さい。今回は大きな事を考えすぎて、ちょっと疲れてしまいましたね。では、自転車に乗って少し汗でも流してきますか。気持ちよい風を受けながら。



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